ベンチャービジネス
ベンチャー(venture)とは、危険を冒しても野心的な目標を達成する冒険的な行動を意味する。表現は悪いが一種の博打(投機)といった方がわかりやすい。英語の諺では次のように使われている。Nothing ventured,nothing gained.(虎穴に入らずんば虎児を得ず)

ベンチャービジネス(venture business)という用語は、そもそも和製英語である。1970年代初めに米国発の研究・デザイン開発型小企業のモデルを日本国内に紹介する際に当時の通産省(現在の経済産業省)のレポートで初めて使用され、その後、清成忠男(当時法政大学教授)らの著作のタイトルに「ベンチャー・ビジネス」が使われてから日本で普及した。英語のventureと同義である。
中小企業などの堅実な成長方法とは異なり、経営リスクは大きいが大企業が取り組まない新機軸の商品やサービスを提供して短期間に大きな市場を創造すること、資金調達先である金融機関の強力な支援を受けて高付加価値型の成長を進めること、比較的若い経営陣がリーダーシップを発揮すること、などの特徴を持つ。

1997年、まだインターネットビジネスに対し社会が懐疑的であった頃、インターネットモール(ネット上の商店街)を起ち上げ創業した「楽天」は、わずか10年で、資本金約1000億円、グループ流通総額1兆円、グループ従業員3000名を超える巨大な多角化企業に成長した。楽天のサイトに掲載されている商品点数は約2200万点、契約企業数は約62000社に達する。2008年現在、同社の取締役会長兼社長の三木谷浩史氏は、過去10年間の成功に満足せず「世界一のインターネットサービス企業」を目指すと宣言している。
マーケティングの視点からIT技術の事業化に本格的に取組んだ楽天の軌跡は典型的なベンチャービジネス成功の事例といえよう。

上記のようなサービス産業やハイテク企業だけでなく、最近では、企業の社会的責任(CSR)が叫ばれ、社会の関心とニーズが環境貢献型または社会貢献型事業にも向けられてきている。ここでは、量的な拡大や急成長とはいえないまでも社会的に有意義で革新的な取組をおこなう企業の事例を取り上げて、ベンチャービジネスの今後の方向性を展望していく。

また、ここでは、本業を中心にユニークな事業を展開し、環境と社会に対する配慮も行っている日本のCSR型企業(中小企業)を取り上げて紹介したい。ISO14001認証取得またはそれに類する環境マネジメントシステムの認証を取得していること、本業や事業活動を通じて地域社会や自然環境保全に貢献している実績があること、従業員の能力を引き出す経営手腕をもち卓越したリーダーシップを発揮していること、技術やノウハウでオンリーワンの地位にある、など大企業以外で優れた中規模以下の企業に絞っている。すべての要件を満たさなくとも、複数の要因で有力な企業も紹介していく。

どんな企業も事業のプロセスで成功への転機というものがある。最初から意図していたわけでなくとも、あの時の決断が今日の我が社の社会的地位を築いた、という歴史的に重要な意思決定に焦点を合わせて成功要因を考察していく。

経営トップもしくは現場担当者に取材した際の過去のインタビューノートや資料を基に解説していく予定である。経営者の人となりや会社の経営史にも触れることになるが、優れてリーダーシップとは何かを考えるきっかけになれば幸いである。