No.017 夜間大学の同窓会はパワー全開!

 50代、60代になって学生時代の面影を十分に残しているという人物はまずいません。そのことを痛感されられるのは、学生時代の同窓会です。2012年3月17日、大阪市立大学2部(夜間大学)の同窓会(地下鉄なんば駅近くの中華料理店で開催)に初めて出席しました。

 同窓会の「杉本会」という名前は、大阪市大キャンパスがある阪和線杉本町に由来すると私は勝手に解釈しています。ここに集まる方は、なぜか学生時代には自治会委員長や大学祭の委員長、職場の労働組合役員など歴戦の強者ぞろいです。定年を迎えて退職した方も多いですが、中には、プロの歌手に転職されたり作家になった方もいます。多士済々です。

夜間大学の同窓会はパワー全開!
とにかく自己紹介がうまい
 夜間大学の同窓会はパワー全開!
女性も数名参加されていました

 総勢30名近いメンバーを見渡したとき、誰も知人がいないのではないかと最初不安になりましたが、自己紹介をして行くうちにちらほらと懐かしい先輩の姿を認めることが出来ました。

 ご多分に漏れず私も含めて学生時代(20代)の顔つきとは様変わりしているので、名前を尋ねて初めて確認できるという訳です。数十年の月日の流れは早いですが同時に一人一人の人生の重みを感じる時間です。

 この自己紹介が大変です。20数名の近況報告が終わるのに、優に2時間近くかかりました。仕事の話や地域自治会、橋下市政下での障害者差別の話、生活苦の中での子育てや病気の体験談まで、実にみなさん、お話上手、論客ぞろいでどなたの話も参考になります。個性的でユニークな人材です。まだまだ活躍できそうな人が山ほどいるので、ぜひ使ってあげてください。流石に、この不況の時期に商売で儲かっていますという報告はなかったですが、幾つになってもみなさん、シブとく、気ぜわしく汗を流しているご様子でした。

 ところで、夜間大学について一般の方はどんなイメージを持つでしょうか。昼間働いて夜勉強するので、大変しんどいところ、学生数も少なくて暗い、寂しい印象を持っているのではないでしょうか。





夜間大学の校舎でもあった大阪市立大学1号館(文化庁登録有形文化財)

http://www.osaka-cu.ac.jp/about/commons/history.html

 実はそれは大変な誤解で、夜学生というのは5年間の学生生活を通常の学生の2〜3倍以上のスピードで青春を謳歌したマルチ人間です。仕事も学問も(これは適当ですが)人間関係も趣味もすべての活動で「1日を2日以上」生き抜いた自立心とパワーあふれる人たちです。

 夜間大学の授業は一日2コマしかありません。昼の仕事が終わって大学に到着すると直ぐに授業が始まり10分程度の休憩時間を挟んで2限目の授業が始まります。それが終わってサークルや自治会の活動もあります。通常、夕食にありつけるのは授業終了後になるので、授業中は空腹と睡魔との闘いになります。私もギター部に所属していましたので、週2〜3回の練習に参加するのが精一杯でした。合奏するためには事前に課題曲を練習する必要があるのですが、1日1時間の個人練習の確保もままなりません。したがって、週末や夏休みを使って、二上山のお寺で合宿して練習不足をカバーしました。先輩は後輩を可愛がり後輩は先輩を慕う、自然にそのような学風が培われて行きます。夜間大学生の絆は深く、一度やったら止められません。

夜間大学の同窓会はパワー全開!
市大2部ギター部の練習風景
 夜間大学の同窓会はパワー全開!
商学部コンパの風景

 この学生生活を耐えて卒業できた者は少々のことでは動じない人生を送ることが出来ます。

 18〜19歳で入社したり自営業を手伝ったりあるいは公務員になって社会人としての生活を始めるのですが、当然、職場の周りは先輩だらけ、仕事も初めてで一から学ばなければならない、辛い下積みの生活が始まります。それでも仕事をしながら学費を稼いで学問したい、自由な環境で友人を作りたい、税理士や弁護士の資格を取りたい、議論をしたいなど様々な動機で二部に通ってきます。
 1960年代にヒットした映画「若者たち」や「キューポラのある街」の世界がそこにありました。しかし、70年代後半に入ると、経済が豊かになって、夜間大学はきつい、親の援助を受けて専門的に学びたい、ゆっくり学生生活を謳歌したいとする多くの若者は昼間大学に流れていきました。昼間仕事をせずに夜大学に通い形式だけの学歴をとる二部学生も次第に増えていきます。ある日、外車を乗り回して二部に通う社長の息子が出てきたのには面食らいました。その学生は、昼間仕事をしていないので、昼間にサークルボックスで軽音楽の練習をやり、夜になると授業に出ると答えていました。何で2部に来るんや?素朴な疑問が生じました。これは極端ですが、70年代後半からは夜学をめぐる環境も夜学の特徴も大きく失われていったのは事実です。

 しかし、大阪市立大学二部学生(2009年当時)のアンケート調査によれば、入学時の正規雇用者は減っても入学後にアルバイトなどの非正規雇用の元で約8割の学生が働いているとの報告もあります。働きながら学びたいというのは人間の本能ではないかと思います。全国に潜在するこのような若者や社会人を受け入れる教育体制は今後も必要ではないでしょうか?

 21世紀に入って、徐々に夜間大学受験者も減少し、経営的にも非効率だと言う理由で、全国の夜間大学が廃止されていきました。大阪市立大学は、在学生の自治組織にも諮らずに一方的に2009年、募集を停止すると発表しました。仕事を持たない学生が増えていることや受験者の減少が表向きの理由だとしても、在学生や卒業生の意向を無視して一方的に結論を出す大学の姿勢は教育機関として無責任ではないでしょうか。

 大学に社会人が入学し教育を受けるというのは、学生にとっても社会にとっても健全な姿です。この苦難を乗り越えて、名前や形は違っても社会の要請に応えられるモダンな夜間大学が誕生すればと願わずにはいられません。

夜間大学の同窓会はパワー全開!
大阪市立大学杉本会のメンバー(2012年 3 月17日)

2012年03月19日 00:00